創造者

彼女は事故により嗅覚を失った。
匂いのない世界。

本当にそう捉えていいのだろうか。
「失う」という言葉に悲しみを覚える。

言葉はある種の方向性を決める。

ある時ふと思った。
「匂いを生み出さない世界」なのではないかと。
彼女は匂いを創造することをやめたのだ。

事故によって視力を失ったなら
それは映像という世界を作るのをやめたのだし
生涯を全うしたのなら
現実という世界を創造することをやめたのだ。

つまり、自分とは世界を創造するものでしかない。
生とは創造そのものであると気がついた。

楽しいこと、苦しいこと、悲しいこと。
上流から下流へ水が流れるように
朝日が毎日登るように
自らが創造した世界は完璧に自分に答えてくれる。

今はもっと手を取り合えるような世界を僕は創造したい。